マーケティング翻訳
マーケティング翻訳について
翻訳の中でもマーケティングはかなりの労力を必要とする分野ではないでしょうか?
マーケティングを必要としている多種多様の業種があり、必要に応じて各分野の専門用語やスタイルを調べ、学ぶ必要があるからです。どの言語コンビネーションでも同様と思いますが、私は日英翻訳しか行っていないので日英翻訳におけるマーケティング翻訳について書きたいと思います。まず翻訳材料である原文ですが、これをそのまま翻訳しただけではもちろん意味を成しません。
ターゲットとなっている商品やサービスのリサーチから始まります。日本市場ではどの様なマーケティングが展開されているかを知ることも重要です。
しかも言葉は毎日誕生しています。特にマーケティングによって新しい外来語が広められ、造語、略語も生まれます。
次に、クライアントが何を伝えたいのかを熟知すること。これは分野にかかわらず大切なことです。強調したい部分、触れてほしくない部分を知ること、あたかも自分がそのマーケティングの責任者になったかのようにセールスポイントを把握することが重要です。
英語のマーケティングではかなりポエティック (詩的 ) な表現が多く使用されますが、そのまま日本語にしても、それを読む日本人は興醒めしてしまうでしょう。言葉選びにはかなり苦労しています。行間を読み、言葉の裏に隠された意図、言葉に含まれた意味を読み取り、柔軟に対応しなければならないところがマーケティング翻訳の難しいところです。
日本語ネイティブである私から見ると、英日翻訳 ( 英和翻訳 ) はともかく日英翻訳 ( 和英翻訳 ) はさらに技術を要する難易度の高い翻訳だと思います。英日では、(時に大げさすぎるほどの)装飾語を見合った日本語に訳せば済みますが、日英では逆により以上に装飾しなければ英語圏に受け入れられる良いマーケティング材料にならないからです。いくら英語圏で生活を続けても、幼い頃からそういった言葉や言い回しに親しんでいなければ、なかなか飾り気のある英語は思い浮かびません。
そして英単語というものは核となる意味から、まるでらせん状に意味が広がり、様々な表現ができるものなのだということを、この英日マーケティング翻訳という分野に携わって改めて実感しています。英語で表現する際には、いくつかの単語で短くまとまったキャッチコピーに仕上げるのに頭をかかえることもよくあります。言葉の響きとリズムのバランス、その言葉にこめられた意味を日本語に翻訳するのは至難の業。ポスターやチラシ、ウェブを飾るキャッチコピーとなると、俳句を詠むのと同様、文字を指折り数えて復唱してしまいます。
言葉を間違えたら数字に反映されてしまうマーケティング翻訳。かなりプレッシャー度の高い翻訳ですがやりがいのある翻訳でもあります。
ここ数年、大手企業のCM等に使用されているキャッチコピーは英語をそのまま使っています。日本の義務教育を受けた人なら理解できる程度の英単語を使い、響きもリズムも良く、英語=格好良いという日本人の心を上手にくすぐっていると思います。しかし、それらを日本語に翻訳するとしたら、あなたはどう訳しますか? ”Drive your dreams”を日本語にするとしたら……?この”Drive”のように、親しみをこめた落語的感覚で意味を幾重にも重ね、メッセージを器用に表現する十二単を纏った単語が英語のマーケティング材料にはあり、それをしっくりとした響きとリズムで同じ深さの意味を表現できる日本語を探すのはまるでジグソーパズルです。
お店の名前にもなっている”Save on foods”、端的で的確な表現ですが、果たして日本語にそのまますると……格好悪いですね。よく使われている”Save on”。”安い”、”価格抑制”というメッセージをどう表現したら”安い=質が悪い”という誤解を招かず、”このお店で買物をしよう”という安心感、親近感、そして品質感に結びつけることができるか。
“フード”は一般的に浸透している外来語だと思います。例えば、ファーストフード、とかフードコートなど、他の言葉と合体して使われますが、単体ではあまり使われていませんね?動物を飼っている人なら、フードといえば動物のご飯と思ってしまうのではないでしょうか?たぶん私の母はそう勘違いするでしょう。
英語環境の中で日常的に目にしたり耳にしたり口にしたりする英語の意味はわかっていても、英語を理解できない日本人にどう伝えるか、翻訳というのは本当に難しいと痛感しています。
日本人同士でさえ説明しにくく、理解されにくい事柄も多々あるのですから。
より多くのボキャブラリーを習得することが翻訳者として一番大事なことなのでしょう。
英日辞書よりも類義語辞典のほうがマーケティングには役に立つかも知れません……。
