‘英語翻訳コラム’ コラム
英文契約書の基本的な共通構成要素を体得する
A.英文契約書にBoiler Plate Clausesと云われる共通条項があることを知る。
契約と一口で云っても色々な種類の契約がある。例えば、売買契約 ( Sales Agreement )、雇用契約 ( Employment Agreement )、サービス提供契約 ( Service Agreement )、保証・担保契約 ( Guaranty )、販売 ・ 代理店契約 ( Distributorship Agreement )、賃貸借 ・ リース契約 ( Lease Agreement )などがあげられ、他にも多種多様の契約書が存在する。そこで、契約書の翻訳にあたって、一般的にこれらに共通の条項があることを認識して、「英文表現」と「それに対応する日本語表現」を整理して覚えておくと、各種契約書の翻訳作業が効率的に且つ適格な内容に纏めることができとても参考になるので次に記述してみたい。今回は主要な条項の列挙にとどめるが、これがすべてではない。しかし、これらの主要条項をマスターすれば英文契約書の骨格が可なり理解できると思われる。
B.契約書の共通条項 ( Boiler Plate Clauses ) と云われているもの
- 頭書 ( Caption )
- 当事者 ( Parties ) の特定 ( 当事者の名称、事業所所在地等 )
- 契約年月日 ( Signing Date )
- 設立準拠法 ( Governing Law for Establishment )
- 契約締結地 ( Place of Execution )
- 目的規定 ( Purpose of Agreement )
- 適用範囲 ( Scope of Applications )
- 当事者の関係条項 ( Relationship of Parties )
- 秘密保持義務 ( Confidentiality or Secrecy )
- 契約期間 ( Contract Term or Duration )
- 契約違反及び財政困難による解除 ( Termination by Breach and Financial Difficulty )
- 自由契約解除条項 ( Termination at Will )
- 契約終了後の効果及び措置 ( Effect after Termination )
- 期限の利益喪失条項 ( Acceleration )
- 損害賠償条項 ( Damages )
- 損害賠償額の予定条項 ( Liquidated Damages )
- 訴訟費用負担 ( Litigation Cost )
- 不可抗力免責条項 ( Force Majeure )
- 履行困難又は事情変更条項 ( Hardship or Change of Circumstances )
- 完全合意条項 ( Entire Agreement )
- 責任否定条項 ( Disclaimer )
- 分離可能性、適法性又は無効条項 ( Severability, Legality or Invalid Provision )
- 権利放棄条項 ( Waiver )
- 契約譲渡条項 ( Assignment )
- 通知条項 ( Way of Notice )
- 相殺及び相殺禁止条項 ( Set-off and Prohibition of Set-off )
- 見出しに関する条項 ( Headings )
- 使用言語条項 ( Language )
- 誠実協議条項 ( Good Faith Negotiation )
- 準拠法条項 ( Governing Law )
- 仲裁条項 ( Arbitration )
- 裁判管轄 ( Jurisdiction)
C.英文契約書を体得することの楽しさ
グローバル化が進む中で、私が英文契約書について学ぶことに興味を持ち、その重要性を再認識したのは、 5 ・ 6年前である。ある文献を読んでいて次の情報に刺激されたことがきっかけとなった。
- 世界中の郵便、テレックス、電報の4分の3に英語が使われている。
- 世界中で発行される技術 ・ 科学分野の定期刊行物の約半分が英語で書かれている。
- 世界各国のコンピューターに保存されている情報の80%は英語を介している。
- インターネットのウェブサイトも85%以上が英語で行なわれている。
( 今日では、この比率が更に変動しているものと推察する )。
ビジネスが世界的な規模で広がってしていく過程で、多国籍間の契約等の締結 ・ 活用が大きな役割を果たしているものと痛感した。そういう時代のニーズに応えられる一員として英文契約書翻訳の知識と技能の向上に取り組み、翻訳のお手伝いができることに生き甲斐と楽しさを感じている。
英文契約書の翻訳上達への対策
A.契約書の役割を認識する。
- 契約は、当事者間の意思を確認するためのもの。合意が成立したことの証拠となります。
- 国際取引では、当事者間の言語 ・ 文化 ・ 習慣 ・ 考え方などが異なる中で、契約書がなければ取引に関する契約内容 ・ 契約条件等についての誤解は紛議 ・ 紛争が生じやすくなります。そういう場合に備えて契約が取り交わされます。
- 英米法には 「 口頭証拠排除の原則 ( Parole Evidence Rule )」というものがあり、書面重視、証拠重視、口頭証拠軽視 ・ 排除の傾向があると云われています。
B.契約書の厳しさ ・ 難しさを念頭において翻訳にあたる。
- 契約書には、当事者間の権利 ・ 義務、責任範囲等が記載されます。原文に記載されたそれらの厳格な内容を、正しく且つ出来るだけ忠実に表現する必要があります。
- 翻訳は、単語 ・ フレーズの言葉の置換えでなく、意味 ・ 内容の表現が必要と云われています。特に、英文契約書翻訳者には、語学力に加えて、専門知識、当事者の国の文化的なバックグラウンド等を少しでも多く知っておくことが役に立ちます。
C.英文契約 ・ 法律文書の特徴を生かした表現をする。
- 契約書 ・ 法律文書で使用される英語の意味が、一般的な日常会話や小説 ・ 文学の分野と異なるものがあることを認識して使い分けます。
- 英語に堪能でも法律的な知識が乏しいと理解に困る上、その意味の表現が異なってきます。契約書の言葉の表現における重要性を認識して翻訳します。
- 契約 ・ 法律用語の意味をよりよく知るには、一般の英和・和英辞典以外に 「 法律用語辞典 」、それも対訳形式だけでなく、内容解説付きのものを常備しておくと役に立つでしょう。
【 一般表現と契約書上の意味 ・ 表現の相違の例 】
使用される同じ英語でもその表現内容 ・ 意味合いが異なる場合があります。その幾つかの例を次に列挙します。
|
<英単語> |
<一般的な意味> |
<契約上の意味> |
| action | 行動、活動 | 訴訟、告訴、法的行為 |
| attachment | 添付 | 添付物、差押 |
| consideration | 考慮、配慮 | 約因、対価 |
| dissolution | 分離、分解、溶解 | ( 企業等の )解散 |
| execute | 実行する | 調印する、執行する |
| failure | 失敗 | 不履行、怠慢 |
| govern | 支配する、統治する | 準拠する |
| instrument | 計器、楽器 | 法律文書 |
| liable | ~しがちな | ~の( 賠償・法的 )責任がある |
| observe | 観察する、見守る | 遵守する |
| performance | 性能、功績 | ( 契約上の債務の )履行 |
| provide | 提供する、供給する | 規定する、定める |
| title | 表題、肩書 | 所有権、権原 |
【注】 上記の内容は、これまで英文契約書を中心とした法律英語を学び、その関係資料の翻訳実務を体験する過程で特に印象に残ったものを参考までに纏めてみた。
